紙や印刷の素材的技術的限界によって、雑誌や単行本では決して見ることのできない描線や色合いがあります。そして『バガボンド』の原画には、そんな線や色があふれています。報われない線や色にまで魂を込め、ただひたすら描き続けていく作業、その繰り返しが『バガボンド』を形作り、井上雄彦氏にさらなる力を与えてきたのかもしれません。
そんな線や色を、なんとしてでも見て頂きたい! という思いで、この『バガボンド』初の画集は作られました。原画を限りなく忠実に再現した2冊の画集。一切手抜きなしの全328ページを通して、井上雄彦氏が8年間、『バガボンド』に込め続けた魂を、ぜひご覧ください。
色の魅惑「WATER」(カラー原画集)
1.カラー原画の微細なニュアンスを再現。

単行本や、雑誌で普段目にする「バガボンド」のカラーイラスト。実は原画のニュアンスが出ているとは言い難い面があります。原画が、とてもデリケートな色使いで着彩されている上に、井上雄彦氏の使用しているカラーインクには、蛍光色が含まれており、普通の4色印刷技術で再現するのは至難の業なのです。我々も井上氏の原稿をいただくたびに、読者の皆様に原画の色の凄さを十分にお伝えできないことが、とにかく残念で仕方がありませんでした。井上氏のカラー原画中心に構成された画集「WATER」では、原画のニュアンスを出すべく、最新の技術を使って極限まで努力を重ねています。度重なるレイアウトの推敲や、刷り直しはもちろんのこと、印刷所の作業場のライトにまでこだわり、明かりの環境を井上氏の仕事場の環境に極力近づけることで、原画の微細なニュアンスをどこまで再現できるか突き詰めました。キャラクター達の肌、風景、時刻による光の違い、例えば夕暮れの様々な色合いがとけ込んだニュアンス・・・。原画のなんとも絶妙な色合いを十分楽しめる仕上がりになったことをお約束いたします。
2.「水で絵を描く」プロジェクト。

「バガボンド」22巻に、武蔵が水で絵を描くシーンがあります。「本当に描いてみたらどんな感じになるのだろうか?」という好奇心に端を発し、「井上雄彦、水で絵を描く」プロジェクトがスタートしました。奇しくも井上氏の考えたカラー画集タイトルが「WATER」。この画集にぴったりな描きおろしである一方、「本当にうまく描けるのか?」「描けたとしても、乾くまでの一瞬で、うまく撮影できるのか?」などという不安要素も多数ありました。「WATER」「墨」のデザイナーであり、これまでの「バガボンド」全単行本も手がけてこられたデザイナー田島照久氏が様々な紙を用意し、「水の絵」をもっともうまく撮影できる条件を模索。作画&撮影当日は、井上氏に何枚も何枚も根気強く描き続けていただきました。そして、田島氏による緊迫の撮影。その結果は・・・?
乾くまでの一瞬の命だった原画。画集の中のみで生き続ける、「水で描いた絵」。その味を「WATER」でお楽しみください。
3.多数の描き下ろしイラスト達。
「これまで応援してくださった「バガボンド」ファンの方々への「贈り物」のような画集にしたい」。そんな思いで、描き下ろしに臨んだ井上氏。ここでお見せできないのは残念ですが、「WATER」に収録された描き下ろしは、情感たっぷりのイラスト多数です。現代の都会ではなかなか感じることのできない、海の音、夕暮れの雲、夜の闇、虫の声・・・、かつて私たちのそばに普通にあったはずのもの。どこか懐かしく、切ない描き下ろしイラスト達が「WATER」の中にとけ込んでいます。
4.「モーニング」28号・38号・39号表紙イラストの謎。

「モーニング」表紙絵として掲載された武蔵・又八・小次郎のイラストには、実はある共通点が存在します。その共通点は、レイアウトによって隠された、武蔵の下半身・又八の左手と背景・小次郎の足許にあります。実はこの3点のイラストは画集用の描き下ろしイラストだったのです! イラストの全貌は画集「WATER」でのみ確認できます。ぜひお確かめください! ヒントは、もし「バガボンド」の○○が○○だったら・・・。全くヒントになってませんね(笑)。



