vol.1 宇宙飛行士って、泳がなきゃいけません
──現在、十年ぶりの宇宙飛行士選抜試験が実施されているんですよね。2009年の2月に最大三人を採用する予定のようですが、選抜試験事務局の柳川さんから見て、今回の受験生はどんな人たちですか?
「いやぁ、みんなスゴイよ。応募総数は過去最多の963人。履歴書を見ていたら、みなさん実社会の重要なセクションでバリバリやっていらっしゃる方ばかり。正直、全員、私の部下に欲しくなったよ(笑)。究極のドリームチームが出来ますね!」
──書類審査でまずは230人になりましたが、どういう基準で選抜していったのですか?
「我々は実務経験を重視しているんですよ。今回、受験生には、所属組織での仕事の内容や経歴を書いてもらい、これまでどのような仕事をしてきたかを確認しました。所属している組織の中で結果を出していること、これがかなり大切なんだよ。そして、外国人と何年間も訓練や宇宙で共同作業をしなくちゃいけないんだから、協調性、情緒安定性は基本かな。もしも、上司に頭突きして仕事をクビになっちゃったら、他のところで相当、挽回しなきゃダメだね(笑)。あと書類で見るのは、英語の能力……。宇宙飛行士は合格直後にアメリカのヒューストンでNASAの訓練インストラクターと真剣勝負の生活がはじまるから、英語でのコミュニケーション能力は相当の水準が必要だよ」
──2008年8月の一次試験で50人にまで減ったんですよね。一次試験って、どんな試験だったんですか?
「まず、医学検査。体が丈夫なのがすごく大切。その他に、一般試験だよ。コレは技術系の企業の入社試験に近いかな。数学、物理、化学、生物、地学の分野で大学の教養課程で勉強するようなことが出るよ。もちろん宇宙の基礎知識の試験もある。普通の会社で受けさせられるような適性試験もやりましたよ。あとはやはり一般教養試験。外国人と半年も国際宇宙ステーションで実務をやるのだから、日本代表として文化も説明できなければならないわけだからね。ちなみに、合格直後にいきなり必要ってことでは、応募の基本資格に明記しておいた『運転免許証』はけっこう重要なの。合格した後に教習所に通ってもらう暇なんてないからね。私も数年前にヒューストンに、3年間滞在したけど、ヒューストンで車を運転できなければ不自由なんてもんじゃないよ」
──さらに、10月の二次試験では、もっと人数が少なくなったんですよね。今度はどんな試験をしたのですか?
「英語や心理適性試験は面接形式でグッとレベルが高くなりますね。試験が変わるというよりも、難しくなる」
──「過去の選抜では、二次で美術試験があった」という情報があって受験生は絵画を勉強していたみたいでしたけれど、今回はどうなんですか?
「いや、あの、まあ、選抜途中の試験についてはヘンに情報を与えて混乱を招いちゃダメだから、そういう質問はノーコメントだよ。今回の選抜が終わって時間が経ったら、話せるかもしれないからまたおいで」
──2009年1月の三次試験では、最大で三人までしぼるために、どんな選抜試験をやる予定なんでしょうか?
「『宇宙兄弟』みたいに閉鎖環境での行動観察も実施されることになりますよ。もちろん、閉鎖環境にいる間に仲間のメガネを割っちゃったら、それは減点対象になるかもしれないね(笑)。あと、宇宙飛行士って航空機を操縦する訓練もあるから、航空機訓練の最中に海に不時着することだってあるかもしれないよね。だから、数十分間、救助を待って海でサバイバルしなければ、って可能性もあらかじめ想定しなければならない。それで、選抜試験では着衣水泳を行います。宇宙飛行士って、宇宙遊泳の他に水泳もできなければいけないものなんだよ(笑)。六太くんも、水泳をしておくんだよ」








